fortia’s カメラレビュー

カメラと猫と骨董品

コーティングあり沈胴ゾナー

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下記記事にて紹介した戦前ツァイスの沈胴式ゾナーにコーティング処理が施されたものを入手した(写真右)。

レンズコーティングは1935年にツァイスが特許登録した技術で、戦前タイプのレンズでもコーティングが施されたものは存在してはいるがそれほど多くは見かけない。

1.5ゾナーやビオゴンでは時々見かけるものの、沈胴ゾナーでは見たことがなかったので物珍しさからつい手を出してしまった。

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しかし何というかこれ、ちょっと安っぽい。私が所有している他の個体に比べ軽い。鏡筒の材質が違うのかもしれない。

細かく比べて見ると他にも色々な違いが見えてくる。

f:id:fortia:20190127224852j:plain左がコーティングなしの一般的な戦前ゾナー右が今回入手したレンズ

まずピントリングの形状が違う。

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コーティングなしの普通のゾナー(写真下)はピントリングが一つのパーツだが、今回入手したレンズ(写真上)はなぜか二つに分かれている。そして刻印されている数字の太さも不揃いで見栄えが良くない。さらによく見るとピントリング下にあるパーツのローレット加工にも違いがある。下の方が目が滑らかなのが分かるだろうか。

このちょっと手抜きな感じはゾナーコピーと言われるジュピター8を彷彿とさせる。

下の写真はソ連カメラの専門サイトに掲載されているジュピター8の始祖ZK。ジュピター銘の沈胴式は見つからなかったため、こちらを拝借した。絞りリングの形状が今回紹介しているレンズと同じである。

http://www.sovietcams.com/sovietcams/m/m_images/wfiles/i0a5rd9858.jpg画像はSovietcams.comより

 

普通のツァイスレンズではないことを窺わせる違いは他にもある。コーティングの色が他のコートありイエナレンズと明らかに違う。

f:id:fortia:20190126233729j:plain写真右は戦前タイプの1.5ゾナーにコーティングが施されたもの。左が今回のレンズ。毒々しいとすら思うほどに鮮やかな水色だ。ツァイスのレンズでこんな色は見たことがない。ツァイス以外でもほとんどない。こんな鮮やかなコーティングを見たのはジュピター9以来である。

というわけでこのレンズ、ゾナーというよりジュピターに近い存在ではないかと思う。まあどちらにせよレンズ構成的には同じだから写りに大差はないだろう。コーティングがある分コントラストは高いはず。

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α7RII + CarlZeissJena Sonnar T 5cmF2        ISO100   F2    1/3200 

やはりくっきり写る。 

f:id:fortia:20190127180713j:plainα7RII + CarlZeissJena Sonnar T 5cmF2        ISO100   F2    1/4000 

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中央部拡大。丸ボケもきれい。

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α7RII + CarlZeissJena Sonnar T 5cmF2        ISO100   F2    1/5000 

画面外だが左上に太陽がある場面。さすがにこれは厳しかったようだ。コントラストが低下している。眩しくてよく確認しないまま撮影してしまったのでピントはちょっとずれてしまった。

f:id:fortia:20190131181809j:plainα7RII + CarlZeissJena Sonnar T 5cmF2        ISO100   F2    1/1250 

ボケも特に崩れたりしない。

極端な逆光の場面以外、コントラストは保たれる。

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と言ってカリカリに写るわけでもないのがやや残念。

 

f:id:fortia:20190127181359j:plainα7RII + CarlZeissJena Sonnar T 5cmF2        ISO100   F2    1/1250

おもしろいフレアが撮れたが、これはマウントアダプター内の反射のせいかもしれない。レンズを繰り出した時にヘリコイドの金属剥き出しの部分が出てきてしまうので良くないなとは思っていた。

f:id:fortia:20190131232607j:plainα7RII + CarlZeissJena Sonnar T 5cmF2        ISO100   F2    1/1000

手で遮光してやれば消える。絵としてはフレアがあった方が良かったかも。


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戦前ツァイスの作ったゾナーなのか、戦後ソ連に接収されたイエナで作られたゾナーなのか、それともキエフで作られたジュピター(の銘板すげ替え)なのか、あるいは後の世でニコイチされたフェイクなのか。素性はよく分からないままだが、そういう歴史のあれこれを想像しながら使うのもまた楽しい。