fortia’s カメラレビュー

カメラと猫と骨董品

FE55mmF1.8ZA SEL55F18Z Sonnar

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FEマウントで最初に発売された標準レンズ。Carl Zeissの名を冠した高級シリーズでもある。今でこそ廉価版の50mmF1.8が用意されているが発売当初は他に選択肢がなかったため、最初の標準レンズを高価格帯のツァイスで出してきたソニーに異を唱える人も多かった。と記憶している。

発売されてからは撮影サンプルや各種テスト結果により価格に見合う性能を持っていることが明らかになり、そういった声も小さくなって今現在の確固たる地位を築くに至る。

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見ての通り小型なので扱いやすい。それでいて絞り開放から全面にピントがしっかりくる。

f:id:fortia:20180713224017j:plainα7RII + SEL55F18Z     ISO100   F1.8   1/8000

中央部ピクセル等倍切り出し

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左端部切り出し

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右端部切り出し

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4000万画素をピクセル等倍で見てもこれだけ写っている。しかも中央と周辺部の写りにほとんど差を感じない。

ちなみにFE50mmF1.8とは周辺部の描写に大きな差がある。比較結果を過去の記事に書いているので参考にしてください。

55mmという中途半端な数字だが感覚的には50mmのレンズを使っている時と特に変わらない。FE50mmと比較すると確かに少しだけ画角が狭いが、同じ条件で撮影、比較してようやく気づく程度でしかない。

f:id:fortia:20180624021413j:plainα7S + SEL55F18Z     ISO100   F11   1/125

標準レンズなので何でも撮れる。もちろん画角は広くないから広角レンズのように広範囲を収めることはできないが、絞って平面的な風景を収めることは当たり前ながらできるし、絞りを開けて望遠レンズのように被写体を浮き上がらせることもできる。そして望遠レンズのように狭い画角の制約を受けないから構図の自由度も高い。

f:id:fortia:20180617170040j:plainα7RII + SEL55F18Z         ISO320   F4.0   1/250

f:id:fortia:20180617015931j:plainα7S + SEL55F18Z         ISO100   F3.5   1/5000

f:id:fortia:20180709015622j:plainα7RII + SEL55F18Z         ISO250    F2.5    1/250

等倍切り出し。f:id:fortia:20180711204648j:plain

オートフォーカスは静かで速い。f:id:fortia:20180709020527j:plainα9 + SEL55F18Z         ISO100   F1.8   1/640

厳しい逆光条件でも破綻しない。多くの場面でフレアが生じることなく色がしっかり残ってくれる。f:id:fortia:20180709021501j:plainα9 + SEL55F18Z         ISO100   F4.0   1/200

f:id:fortia:20180617015600j:plainα7S + SEL55F18Z  ISO250  55mm  F1.8  1/4000

ピントを遠くに置いてもいい塩梅にボケてくれる。こういう場所で被写界深度を深くするとどうしてもうるさい写真になりがちなので、こうやって適度にボケてくれるとありがたい。

ちなみにこの写真はRAW現像時にかなり暗部を持ち上げている。元の写真では右の建物は黒く潰れている。f:id:fortia:20180623002352j:plain

暗部を持ち上げても色が破綻しないのはα7S系ならでは。7RIIもかなりがんばってくれるが、7S系の方が色がきれいに出る。

 

ボケ Bokeh

背景次第だがボケは絞り開放付近で周囲が若干流れる。

f:id:fortia:20180624024346j:plainα7S + SEL55F18Z      ISO100    F1.8    1/1000

↓ボケの流れが気になる場合は少し絞れば解消する。

f:id:fortia:20180709023741j:plainα7S + SEL55F18Z     ISO100    F2.5    1/1000

これらの写真、ぱっと見では何を撮ったか分からないだろうが、中央にいるメジロを撮影したものである。フルサイズの55mmではこのくらいの大きさで写すのが限界。これ以上近寄ったら逃げられてしまう。まあ最近のデジカメの性能なら画質を損なうことなく切り出し拡大できるので、一見遠めに感じる被写体でも実は結構いける。

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開放付近で見られるボケの流れは被写体によって現れたり現れなかったりする。F1.8-2.0で撮影した写真を並べてみる。

f:id:fortia:20180617015425j:plainα7RII + SEL55F18Z         ISO100  F2.0  1/3200

f:id:fortia:20180711013109j:plainα7RII + SEL55F18Z         ISO100  F1.8  1/1000

f:id:fortia:20180711013603j:plainα7RII + SEL55F18Z         ISO100  F1.8  1/1250

f:id:fortia:20180711204257j:plainα7RII + SEL55F18Z         ISO100   F1.8   1/8000

f:id:fortia:20180711205036j:plainα7RII + SEL55F18Z         ISO100   F1.8   1/1600

f:id:fortia:20180624023739j:plainα7S + SEL55F18Z  ISO500  55mm  F2.0  1/8000

流れが生じる条件はよく分からない。ピントの位置、そこからの背景、前景までの距離、丸ボケの有無あたりが関係しているような気はする。いずれ検証してみたい。

f:id:fortia:20180711022348j:plainα7S + SEL55F18Z         ISO125  F1.8  1/8000

丸ボケの形を確認。中央部拡大。

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左上拡大。口径食によりボケが潰れ両端が尖る。f:id:fortia:20180711225743j:plain

丸ボケの形状変化は口径食が主因だろう。ボケが流れる現象は口径食より非点収差だろうか。このレンズのMTFを見ると周辺部において放射方向と同心円方向のコントラスト応答に差があるので非点収差自体の存在は窺える。

f:id:fortia:20180715010803j:plainα7SII + SEL55F18Z  ISO100  F1.8  1/125

 

コマ収差 Coma

絞らずに夜景を撮ると気付く。

f:id:fortia:20180717011854j:plainα7S + SEL55F18Z   ISO200   F2.0   1.6秒

右端拡大。光点が外に向かって尾を引き三角形になってしまっている。

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絞れば解消する。

f:id:fortia:20180717014845j:plainα7S + SEL55F18Z   ISO100   F5.6   30秒

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歪曲 Distortion

f:id:fortia:20180624013621j:plainα7RII + SEL55F18Z  ISO250  F2.0  1/250

使用していて歪曲が気になることはない。とは言えこのような写真で粗探しをしてみると四隅に怪しい箇所を見つけることもできる。Lightroomのレンズプロファイルによる補正を有効にしてみると……

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分かりにくいので修正前と修正後をアニメーションGIFにしてみた。

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四隅を見れば変化していることが分かるだろう。

歪みはあってもこの程度に過ぎない。

 

f:id:fortia:20180705004207j:plainα7RII + SEL55F18Z   ISO100   F4.5  1/640

f:id:fortia:20180624024319j:plainα7RII + SEL55F18Z   ISO100   F1.8  1/640 

f:id:fortia:20180715035541j:plainα7RII + SEL55F18Z   ISO100  F2.5  1/250 

f:id:fortia:20180717215612j:plainα9 + SEL55F18Z   ISO100  F2.2  1/80 

f:id:fortia:20180715035703j:plainα7S + SEL55F18Z   ISO100  F14  1/250 

フルサイズの標準レンズは使っていて楽しい。画角的にもそこそこ広い範囲をカバーしつつボケもしっかり活用できるので、表現の幅がとても広いと感じる。フルサイズのレンズにしては小さく軽いので、気軽に持ち出せるのも良い。

趣味で写真をやってみたいと思う人はまずこういった標準レンズを付けてあれこれ撮ってみると写真の面白さが分かって良いと思う。