コシナ製のMマウント(ZM)レンズ、ビオゴン35mmF2をライツミノルタCLに装着。ライツとミノルタとカールツァイスが同居する不思議な組み合わせ。
随分前に入手したものの、使う予定もなく防湿庫に鎮座するだけの存在だったこのレンズ。前回21mmF4.5ビオゴンをフィルムカメラで使ったところ意外と楽しめたので、このレンズもフィルムカメラで使ってみることにした。
銀と黒の組み合わせも悪くない。
ところで、使う予定もないレンズをなぜ入手したのか気になる人がいるかもしれない。その理由は次の図を見てもらえば分かるだろう。
ゼロディストーションと言っていいのではないだろうか。歪曲が少ないと言われるビオゴンタイプの中でもこのレンズは特別だ。ZMシリーズにはオリジナルビオゴンに似せたレンズ構成の35mmF2.8もあるが、そちらはデーターシート上の歪曲収差がこのレンズより大きい。
そういう意味でこのレンズはオリジナルよりもビオゴンらしいビオゴンと言えるのではないかと私は思っている。
機材マニア的な動機としてはこれだけで十分である。実際にどう写るかとか、歪曲ゼロが実用上どれだけの意味を持つのかといった些事に囚われることはない。
同じ理由でホロゴン16mmも防湿庫に眠っている。
それではまずいつもの写真を。
中央部を拡大。
ちょっとゆるい気がする。シャッターが1/1000までしかないので露出はオーバー気味になってしまっているのだが、このゆるさはそれ以前の問題のように見える。
このレンズをα7RIIに付けて同じ時間帯に同じ場所から撮影した写真と比べてみる。
しっかり解像しているからレンズの性能に問題があるわけではなさそうだ。
レンズの無限遠が出ていないのかと思い、リコーのGXR A12に装着して確認してみたが、そちらも問題ない。ちゃんとレンズを回し切ったところで遠景にピントが来る。オーバーインフでもない。
一連のフィルムに写る他の写真では細部まで解像しているのでフィルムの問題でもない。
この撮影の時にたまたまピントリングを回し切れていなかったのかもしれない。それ以外はちょっと思い当たらない。いずれまた撮り直して検証してみたいと思う。
周辺描写
このレンズはフィルムカメラで使う場合は絞り開放でも周辺部の描写は安定している。
↓デジタルカメラで使うと流れてしまう。
作例
撮影ごとに記録した絞りとシャッタースピードのメモがあるので、記載した値は概ね正しいはず。
歪曲なし。撮影時に僅かに傾いてしまったが、手持ち撮影ではこの辺が限界だろう。
絞り開放では少しハロをまとうような柔らかい描写。開放からパキパキというレンズではない。
レンジファインダーは撮影時にボケ量が確認できないのが難しい。この写真はいい具合にボケてくれてマリンタワーの輪郭もなんとか残った。
左右のパーフォレーションが残っているのもいいなと思い、この写真では切り抜かずにそのままにした。
35mmなのでボケ量は多くないが、柔らかく形が残りながらボケていく感じが良い。
神奈川県庁近くのCJ CAFE。
地面スレスレからファインダーを見ずに撮影。奥にも猫じゃらしがあってそれが光に透けてきれいな背景になるんじゃないかと思って撮影したが、強烈な太陽光で消えてしまった。仮に写っていたとしても想像していた構図と違うので残念でもない。運任せの写真は見るまでの期待があって楽しい。
逆光は苦にしない。
この写真は虹が出てしまった。しかし総じて逆光に強くフレアーで画面全体のコントラストが低下してしまうような写真はなかった。すべての場面でレンズフードは付けていない。
玉ボケを作りたかったのだが、シャッタースピードの上限1/1000に阻まれ絞りを開けられなかった。NDフィルターを持っていくべきだった。でも正直なところ撮影中のフィルター着脱は面倒なのでHexarRFの入手が望まれる。
良いレンズであった。しかしこうして撮影した写真を並べてみると歪曲ゼロが生きている写真がタイルを写した写真以外に一枚もないので、私の場合はやはりこのスペックは宝の持ち腐れになってしまうようである。
ライツミノルタCLはとても良いカメラ。機能的な面でHexarが欲しいところだが、このデザインは捨てがたい。外装の仕上げも美しい。他のMマウントカメラに比べるとなぜか人気がないので割安に入手できる。