fortia’s レビュー

カメラと猫と音楽と骨董品

レディー・アグニュー

数年前まで通っていた絵画教室にサージェントの画集があった。

表紙はこの絵だった。レディー・アグニュー。

John Singer Sargent《Lady Agnew of Lochnaw》(1892) 出典:Wikimedia Commons (Public Domain) 原寸画像リンク

「写実的でうまい絵だなあ」と感心して見ていた。見るだけだったらそこで終わったかもしれない。

模写してみようと思って改めてよく見たら、塗りの粗い箇所が多いと気付いた。

多い、というか……精緻に描き込んだ部分がない。非常にリアルに見える顔ですらそこまで描き込んでいない。

耳なんて「これで耳に見えるのか」と驚くほど。

ドレスは近くで見ると何を描いているのか分からないほど粗いが、全体を見ると違和感なく、布の質感もきちんと表現されている。

子供みたいな感想だが「かっこいい」と思った。

ボールペン画にはまっていた時「無駄な線を減らそう」「線の勢いが残るようにしよう」と意識して描いていた。これがうまくいくと絵に躍動感が出る。多分、絵画というよりイラスト寄りの描き方。

サージェントの絵は筆の勢いが残っているし手数も少ない。それでいてこの上なく写実的に見えるからすごい。

日本ではほとんど名前を聞かないのが不思議だ。アートの世界ではあまり評価されないタイプの画家なのだろうか。

 

ここに描かれたレディー・アグニューの表情は、私には少し硬く見える。左腕の置き場もやや不自然で、肘掛けを掴む手には力が入っている。絵のモデル経験がなく、どう振る舞えばいいのか分からなくて緊張しているのかなと思った。もしそうだったらなかなか可愛らしい絵だと思ったのだが、調べてみるとこの時、病気療養中で体調不良を抱えていたそうだ。ふらつきがあって肘掛けを掴んでいたのかもしれない。