fortia’s レビュー

カメラと猫と音楽と骨董品

音を分離させて聴く

聴音訓練アプリに「同時に鳴る二音を聞いてその音程を判断」する課程がある。

私は和音を聞いても「和音」という一つの音にしか聞こえないのだが、音楽家はこれを構成音に分解して聞き取れるらしい。複数の鍵盤を同時に押して鳴らした和音を一音ずつ聴き分ける。私の場合は、鍵盤で二つ音を鳴らしても混じり合った一つの音しか聞こえない。目の前に鍵盤があって何と何を鳴らしているのか自分で分かっているのに一つしか聞こえない。これを分離させて聴くなんて人間の聴覚で可能なの?という感じだった。

https://www.rs.kagu.tus.ac.jp/eiji/2017GSC-sound.pdf

音楽家は無意識にこれをやっているわけだ。信じられない。

 

でもまあ同じ人間だから、がんばればある程度聞けるようにはなるだろうと一、二年前から訓練を始めた。YouTubeで動画配信しているボーカル講師の方が「鳴っている和音を一音ずつ自分で歌ってみる」という訓練方法を紹介していて、それをやってみたり。もちろん始めは音が当たらないんだけど探りながら当てて。声でうまくいかない時はキーボードを使って。

そういう作業を続けたり、トレーニングアプリのテストを間違えながらも毎日ひたすら繰り返していたら、最近になって分離した音を聞けるようになってきた。完全にそれぞれの音が正しい音高で聞こえるわけではなく、違う音高の音のように聞こえてしまったりもするのだけど、とりあえず一つの音にしか聞こえなかった状態は抜けて、二つの音を聞けるようになった。

心の奥底では、こういう感覚的なものが今さら変わるとは思っていなかったので驚きがあった。縦縞模様に囲まれて飼育された子猫は横縞を認識できなくなる、という実験が学生の頃の教科書に載っていて、一度固定された神経網は変わらないものと思っていた。

輪郭を認識する脳の機能が成長につれどう変化するかをマウスで解明 | 理化学研究所

この研究によるとマウスでは一度固定されたかに見えた神経網が再度変容可になる時期があって興味深い。

https://www.riken.jp/medialibrary/riken/import/jp/info/release/press/2012/120707/image/02.jpg

 

人間の場合もこういう謎の曲線を描いている可能性を考えられなくはないから、あんまり最初から無理だと決め付けたりせずに、何歳からでもやりたいことをやってみるのがいいんだろうなと思った。