fortia’s カメラレビュー

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Distagon T* FE 35mmF1.4ZAとSigma35mmF1.4Artの比較

同じスペックなのでどちらにするか迷う人も多いだろう。

とりあえず大きさ比較。シグマレンズはLA-EA3経由で装着。

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シグマの方が少し長い。重さはシグマがアダプター込みで770gに対し、ソニーが630gと大分軽いようだが、どちらも長く扱いづらいので実際に使ってみると両者ともに「重い」という印象。まあ軽さを求めるレンズではないのでそこはそれほど気にならない。

 

遠方の被写体における解像力の比較  resolution

まずは遠景に対する解像力の違いから見てみたい。

f:id:fortia:20170125003647j:plainα7RII + Distagon FE 35mmF1.4  F1.4  1/2500  ISO100

f:id:fortia:20170125010629j:plainα7RII + ART 35mmF1.4  F1.4  1/1600  ISO100

絞り優先オートで撮ったらシャッタースピードに差が出てしまった。ディスタゴンの方が光の透過量が僅かに多いのだろうか。なおホワイトバランスは同じ設定にして現像。

まずは画像左上隅をピクセル等倍にて比較。

f:id:fortia:20170213140324j:plainDistagon FE 35mmF1.4

f:id:fortia:20170213140420j:plainART 35mmF1.4 

Lightroomで現像したためFE35はレンズ内蔵プロファイルにより色収差の自動補正が掛かってしまっている。

次は中央部分。

f:id:fortia:20170213140632j:plainDistagon FE 35mmF1.4

f:id:fortia:20170213140649j:plainART 35mmF1.4 

最後に右下隅。

f:id:fortia:20170213140728j:plainDistagon FE 35mmF1.4 

f:id:fortia:20170213140745j:plainART 35mmF1.4

中央はどちらもシャープに写るが、隅の解像はFE35の方が良い。ただ、広角レンズの周辺描写は個体差が結構あるので、もしかしたらもっと隅の描写に優れたART35もあるかもしれない。一応、両レンズともサービスセンターに出して正常との回答は得ている(FE35は購入当初やや片ボケ気味だったので修理してもらった)。

「中央はどちらもシャープ」と書いたが、何枚か撮影したのを見比べてみると、ほんの少しだけシグマの方が鋭いかもしれない。いずれにしろ4000万画素のピクセル等倍を見比べての話なので、ほとんどの人にとってはどうでもいいレベルの話だ。こういうユーザーがいるとメーカーも迷惑だろうなといつも心が痛むが、まあ価格が価格なので許してもらいたい。

ちなみにレンズの修理では「ここを直してもらったらこっちの描写が怪しくなった」ということが普通にあるので、規定範囲内で実用上問題なければ気にせず使った方がいい。

逆光条件での比較  against the light

実際に両方使ってみると「細かいこと言わなければ価格差考えてシグマで十分かなあ」という気になってくるが、逆光条件での差を目の当たりにするとディスタゴン、やはり高いだけあるなと思い直す。

f:id:fortia:20170213145650j:plainα7RII + Distagon FE 35mmF1.4  F1.4  1/4000  ISO100

f:id:fortia:20170213150033j:plainα7RII + ART 35mmF1.4  F1.4  1/4000  ISO100

フレアやゴーストが必ずしも悪いわけではない(場合によっては効果的だ)が、やはり逆光の厳しい条件下でもコントラストが低下しないレンズは頼もしい。

両者の逆光条件での差は顕著で、違いはこの一枚にたまたま現れただけではなく他の写真でも同様に見られた。

ただ、これをもってシグマのART35が逆光に弱いとは言えない。FE35は直接ボディに装着されているがART35はLA-EA3を介している。アダプター内での反射の影響は当然考えられる。ART35は一眼レフ用に設計されたレンズなので、フェアな比較を行うためにはAマウント機で試さなければならない。ここで言えるのはあくまで「ミラーレスのα7シリーズで使うことを考えた場合にはFE35mmF1.4の方が逆光に強い」ということ。

 

歪曲収差  distortion

f:id:fortia:20170213151910j:plainα7RII + Distagon FE 35mmF1.4  F1.4  1/2000  ISO100

f:id:fortia:20170213151959j:plainα7RII + ART 35mmF1.4  F1.4  1/2000  ISO100

どちらも弱い樽型。シグマの方がややよく補正されている。

なお上記写真にLightroomのレンズプロファイルを適用すると、次のようになる。

f:id:fortia:20170213152617j:plainα7RII + Distagon FE 35mmF1.4 lens profile applied

f:id:fortia:20170213152817j:plainα7RII + ART 35mmF1.4  lens profile applied

このようにソフトウェアで補正してしまえばどちらも歪曲を気にせず使える。

 

ボケ  Bokeh

普段からボケの形についてあまり意識していないこともあり、どちらのボケが汚いだとか感じたことはなかった。どちらもきれいにボケる。

f:id:fortia:20170213164106j:plainα7RII + Distagon FE 35mmF1.4  F1.4  1/4000  ISO100

f:id:fortia:20170213164202j:plainα7RII + ART 35mmF1.4  F1.4  1/3200  ISO100

シグマのレンズはシャープだけどボケがいまいち、という意見を目にすることもあるが、少なくともART35mmF1.4に関してはそういうことはなく、ボケもきれいなのではないかと思う。

ボケの話から離れるがこの写真でピントを合わせた中心部分をピクセル等倍で切り出すと、

f:id:fortia:20170213164816j:plainDistagon FE 35mmF1.4

f:id:fortia:20170213164918j:plainART 35mmF1.4

こんな感じで、シグマの方がほんの僅かにシャープ。

次はF4での比較。

f:id:fortia:20170213165149j:plainα7RII + Distagon FE 35mmF1.4  F4  1/125  ISO100

 

f:id:fortia:20170213165223j:plainα7RII + ART 35mmF1.4  F4  1/125  ISO100

 ボケに関しては大差ないと言えそう。次の画像は上記写真の一部を切り出したもの。

f:id:fortia:20170213170440j:plainDistagon FE 35mmF1.4 F4 f:id:fortia:20170213170531j:plainART 35mmF1.4 F4 

玉ボケの内側はシグマの方がすっきりしている。

 

オートフォーカス  auto focus

これは明らかにFE35の方が速いし正確。

 

結論としてはどちらを使っても満足できると思うのであとはお金の問題と自分が何を優先するのかという点だけだろう。「逆光でもコントラストの高い写真が撮りたい」「AFの正確さは絶対に外せない」ということならFE35だし、そこを求めないならART35でも十分。

まあアダプター経由というのは色々不安な要素もあるし純正の方が何かと安心なので、お金に余裕があればFE35mmF1.4にしておくべきだが、ART35mmF1.4が優秀かつ相対的に安価なのでなかなか悩ましい。

レンズとしてはどちらも高額な部類なので中古という選択肢もあると思うが、自分の満足いく個体を手に入れたいなら新品購入した方が良いと思う。同じ製品でも製造誤差によるバラツキがあり、もちろんメーカーの許容差を越えた製品は市場に出てこないが、許容差内でもユーザーによっては気になる性能差が出ていることがある(例えば絞り開放で撮影した遠景写真をピクセル等倍で見ないと気付かないような僅かな片ボケ)。

そういう微妙に納得いかないレンズを掴んでしまった場合、新品購入後すぐならばテスト結果を添えて相談すれば対応してくれることが多い。これが中古購入だと修理代金を払うからと言っても対応してくれない。

(2021年1月末、FE35mmF1.4ZAはGMレンズの登場により7万円近く値下げされた)

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