昔の歌謡曲が好きでヒトカラでよく歌うが、歌詞がちょっと気恥ずかしくなるような内容のものが多くて、もう少し何とかならないものかと思っていた。「君に届きそうな唇が空回りー」などと歌っていると時に不安になる。作詞家は素人のカラオケのために作ってるわけではないから筋違いな文句だけど。
で、色々歌っているうちに発声的に歌いやすい歌詞とそうでない歌詞があることに気付いた。
歌いにくい歌詞。
中西保志の『最後の雨』。サビが厳しい。
なけるぅほどぅ、あいーしーたーりーしーないー(動画1:00ごろ)
ことばぁでわぁ、きみーをつーなげーないー(動画3:33ごろ)
4回出てくるこのサビフレーズの最高音が全部「い」段の音になっている。
い段の音は発声時に喉が締まりやすい。喉が締まると高音が出ない。このフレーズの最高音は原曲キーだとhiA、440Hzの音。男が地声で出せる限界付近の音になる。これを「い」で発声しろというのは酷な要求だ。
ライブの映像を見ると本人も苦しそう。カバーする歌手(数原龍友、氷川きよし)もキーを半音下げている。EXILE ATSUSHIのカバーは原曲キーだがこの映像で聴く限りはhiAとG#で裏声にしている所があると思う。
次は歌いやすい歌詞の例。杉山清貴&オメガトライブのサマーサスピション。
2:03からの「気がくるいそうさー」のさーの音がhiA。最後の雨では「い」の音が当てられていて苦しくなってしまうところ、この曲では「あ」段の音だから発声しやすい。杉山清貴の声も非常に豊かに響いている。すごい。
ここだけではなくこの歌は全体的に喉が締まりにくい歌詞の構成になっていると感じる。高音や伸ばす音、力を入れる所が「あ」や「お」などの発声しやすい形になることが多い。
最後の雨の歌詞が悪くてサマサスの歌詞が良いという優劣の話ではなく、歌い手に優しいかどうかの話。最後の雨はわざと高音にイ段を当てて歌手に切なさを表現させていると捉えることもできる。
こういう歌詞の奥深さに気付いてからは詞の内容にケチを付ける気はなくなった。