カールツァイスの85mmF4と聞くとトリオターを思い起こすがZMシリーズの85mmはテレテッサー。トリオターが3群3枚構成のトリプレット型であるのに対してこのレンズは3群5枚のテッサー型。
トリプレットは単純構成ゆえに安物レンズというイメージが強いようだが、個人的にはCarl Zeiss JenaのTriotar 8.5cmにそういうイメージはない。ありふれてしまったテッサーの名よりトリオターの名を冠したレンズを蘇らせてほしかった気もする。まあ、単純構成のレンズに現代の技術を注ぐメリットが見出しづらかったというのはあるだろう。
そういうわけでTele-Tessar85mmは現代レンズの写りである。
ハイコントラスト。
コシナが公開しているMTFを見てみると10本/mmの曲線が中央から周辺まで90%以上を保っている。10本が100%に近いほど高コントラストでヌケの良い画質になると言われているから、この撮影結果もデータ通りといったところか。
解像力(遠景)Resolution
開放F4からはっきり写る。周辺も乱れない。F8まで絞った時と比較してみると中央部は特に変わりないが周辺部は減光が改善されることもあり、より鮮明になる(下画像参照)。
この遠景撮影に関しては、大気の揺らぎがあって撮影条件としてはあまり良くなかったかもしれない。ただ、このレンズで撮影した他の写真を含めてみても最近の「カリカリレンズ」とは少し違う描写傾向を持っていると感じた。写真を小さいサイズで見ていると非常にクッキリしているのだが拡大してみると思ったほど鋭くない。デジタルカメラに対応する前のレンズだからか。
歪曲 Distortion
歪曲収差は感じなかった。歪曲のあるレンズだと↓こういう建物正面からの構図はなかなか撮影する気にならないのだが、このレンズなら積極的に狙える。
ボケ Bokeh
ボケは素直で良い。
開放F4なのでボケすぎずに適度に背景が残った写真が多くなる。これは好ましい特徴だと感じた。もちろん、わざわざ暗いレンズを使わずとも明るいレンズを適宜絞って使えばいいだけの話ではあるのだが、それが意外と難しい。一種の貧乏性だろう、明るいレンズを持ち出すと絞って使うのがもったいない気がして、つい絞りを開けて使ってしまうのである。そして何を撮ったのか分からないボケボケ写真が量産されてしまう。
そういう残念な結末を強制的に回避できるという利点が暗い望遠レンズにはあると思う。やや無理矢理な感じは否めないが蒐集家は皆こうやって必要ないものを買う理由を探していくものだ。
前ボケも滑らか。
手前の緑全体に陽の光が当たってくれていたら良かったのに。
円形絞りではないから絞ると角が出る。
羽根の枚数は多いものの円形にはならない。発売された当時はまだ円形絞りに対するユーザーの要求はそれほど強くなかったのかもしれない。
猫 Nekoh
85mmの中望遠だから猫は比較的撮りやすい。
警戒心の強そうな猫なのでまずは遠くから。
すごく警戒されている。
恨めしそうな視線。
近づけた。神社に住み着いている猫なので人に慣れていないわけではない。
駐車場に住み着く猫。驚かせてしまったようですまない。
よく見ると耳カットされていない。
猫写真はここで終わり。
ピントリングは非常にスムーズに回るためマニュアルフォーカスしやすいレンズではあるのだが、やはり一度瞳ロックのコンティニュアスAFを体験してしまうと、MFレンズで動きものを撮ろうという気は起こらない。
こういうレンズでは動かないものをゆっくり撮るのがいい。
ZMレンズは黒と銀の二色が用意されている。どちらも魅力的だが銀色の方が工芸品的な美しさが際立って良いと思う。ボディがαだと合わないけど。銀のコシナイコンがあればよかった。
コシナイコンがまだ新品で買えた頃、買うかどうか悩んだがシャッター音が当時所有していたBESSAと同じと聞いてやめたのを思い出す。
今度minolta CLに付けてフィルムでの撮影を試してみようと思う。