fortia’s カメラレビュー

カメラと猫と骨董品

Carl Zeiss Jena Tessar 1:8 f=2.8cm ブラックニッケル

コンタックス用の広角レンズ、カールツァイスイエナのテッサー2.8cmF8。『コンタックスのすべて』によると1933年製造開始。この個体はシリアルナンバーから1935年製と思われる。

3群4枚構成の薄いレンズ。

当時の価格は115RM(ライヒスマルク)。50mmテッサーのF3.5とF2.8の2本に次いで安いレンズだった。ちなみに50mmF1.5ゾナーは300RM。

以前も引用させてもらった、ドイツ史が専門のHarold Marcuse教授のウェブサイトによれば1935年当時のUSドルとライヒスマルクの交換レートは1USD=2.48RM(年間平均)とのこと。115RMはUS$46くらいになる。

https://marcuse.faculty.history.ucsb.edu/projects/currency.htm

インフレ計算機によると1935年のUS$46は現在のUS$1,000くらいだそうだから、

https://stats.bls.gov/data/inflation_calculator.htm

ラインナップ中、三番目に安価だったこのレンズも十分に高級品だったということ。

性能は小さいレンズにしては良いと思う。と言ってもマウントアダプター経由のデジカメでしか使っていないから正確なことは分からない。デジカメだと周辺描写が乱れる場合が多いから、本当はフィルムカメラ用レンズのテストには向いていないのだ。このレンズはいずれフィルムカメラでも試してみたいと思う。今回掲載する写真はすべてデジタル一眼に装着して撮影したものである。

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO100, F8, 1/160

開放のF8でボケボケだった周辺はF22、F32まで絞れば改善するが、さすがにこれだけ絞ると中央の解像力が落ちる。フィルムならそこまで絞らなくてもF11あたりで四隅まで安定しそうな気はする。

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO800, F8, 1/125

歪曲はあるが大きくはない。建物を撮影しても気にならないレベルだろう。

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO100, F8, 1/160

近接撮影は得意かもしれない。意外とキレがある。

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO500, F8, 1/125

でも、すぐにフレアが出てふんわり描写になるから、やはり昔のレンズだなと思う。

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO3200, F8, 1/125

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO100, F8, 1/125

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO100, F8, 1/125

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO2000, F8, 1/125

趣きのある古い家が次々と消えていくから寂しい。こういった場所も気付くとマンションになっている。しかし百年後の世界で未来の写真愛好家たちが味のある旧式建築物としてマンション撮影している姿を想像すると、まあ。

α1 + Tessar2.8cmF8   ISO100, F8, 1/125

百年後もこの空は同じように撮影できるだろう。