1929年に生まれたハイスピードレンズ。 製造開始は1932年、この個体はシリアルナンバーから1933年の製造と思われる。
大きな前玉である。レンズ構成は3群7枚。レンズコーティングのない時代には反射面の少ないこの構成が有利だったそうで、当時としては驚異的な性能、明るさだったらしい。
試作品として焦点距離5.8cmのF1.5ゾナーもあったようだ。クッツ著『コンタックスのすべて』に写真が載っている(Contax用のレンズであり、検索すると見つかるLマウントのものとは違う)。
その5.8cmゾナーのシリアルナンバーは1459655。下記リンク先などにある一覧表には含まれない番号である。1456003までが1933年で1500474から1934年だから順序を考えると1933年の製造だろうか。
Carl Zeiss serial numbers - Camera-wiki.org - The free camera encyclopedia
5.8cmゾナー、果たして現存しているのだろうか。市場に出てきたら大変な値段が付きそうである。どんな写りになるのか是非使ってみたいのでコシナが復刻してくれることを願う。
5cmF1.5ゾナーの話に戻る。当時このレンズは大変高価で、テッサー5cmF3.5付きのブラックコンタックスと同じ値段だったそうだ。最近はデジカメの高感度性能が高くなっているのでレンズの明るさはそれほど要求されなくなっている(と個人的には思う)が、フィルム感度が低かった時代にはこの明るさが大きな価値を持っていたのだろう。
F値の小さな明るいレンズは動体を止める高速シャッターを可能にする。1930年代当時もブレない写真を撮るためにこのレンズが求められたのだろう。
中古市場に出回る戦前ゾナーは銀色のクロームメッキタイプが多いが、これはブラックコンタックス用に作られたレンズなのでニッケルメッキに黒塗装仕上げとなっている。
ブラックニッケルのレンズは出回る数が少ない上に状態の良くないものが多い。また5cmでもF2のゾナーはそこそこ見かけるが1.5はあまり見ない。レアなので価格も高騰しているかと思いきや、カールツァイスはライカほどの人気はないようで法外な値段にはならない。このレンズも動作未確認のきれいなブラックコンタックスとセットで6、7万で落札できた(コンタックスの方は壊れていた…)。
それでは撮影例を。ここに掲載する撮影例はすべてα7RIIで撮影したものである。フィルムカメラで撮影した写真も別の機会に掲載したいと思う。
ゾナー型の欠点として指摘される糸巻き型の歪曲収差が見られる。
光の具合が良いと現代レンズのようにコントラストの高い写りになる。絞り開放で撮影。中央部をピクセル等倍で切り出すと…
4,000万画素の等倍だから、これでも十分だろう。
フィルムカメラのContaxではここまで接近した撮影はできない。繰り出しのストッパーを外したマウントアダプターを利用したからここまで寄れた。本来の最短撮影距離より近づいても絵は破綻しない。
↑F2での撮影。周辺の描写が若干怪しいものの、流れたりしないので粗はそれほど目立たずに済む。
↑F5.6まで絞って撮影。オールドレンズとは思えないほど濃厚な色合い。
順光の場面では本当によく写り、現代のレンズと遜色ないなと感心する。
しかし光が弱い場所では昔のレンズによくあるコントラストの低い描写になることも。
逆光でフレアが生じている。それでも昔のレンズにしてはがんばってくれている方だと思う。
曇天だとオールドレンズらしい写りに。逆に言えば現代のレンズは光の条件が悪くても高コントラストになるからすごい。
細かく見ればもちろん現代レンズとの性能差は大きいが、この小ささでこれだけの写りを見せてくれると、標準レンズはこれで十分なんじゃないかと思ってしまう。光学的な面に限れば単焦点標準レンズは90年前の時点ですでに完成していたのかもしれない。
私が入手した個体はカビや曇りもなく斑状のコバ落ち以外これと言った問題のないものだったので撮影結果も良好だったと思う。オールドレンズは曇っている個体が多く、たとえ同じF1.5ゾナーを入手したとしても同様の撮影結果は得られないかもしれないことご留意ください。