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DP2 Quattro フォビオンの魅力

一般的なデジカメと異なる特殊なイメージセンサーFoveon X3」を搭載したシグマ社のデジカメ、DP2クアトロ。私の中では最近のデジカメという印象があったのだが調べてみると2014年発売と一昔前だった。多分フォビオンの進化がこの辺で止まっているからそういう印象になるのだろう。歳をとると月日の経過を早く感じるようになるという話とは関係ないと思う。

フォビオンの何がすごいのかご存じない方もおられると思うので、まず普通のデジカメとの比較画像をお見せしたい。

左がフォビオンセンサー搭載のDP2クアトロ、右が一般センサー搭載のソニー製一眼デジカメNEX-7で撮影した写真。画素数NEX-7が2,400万画素でDP2クアトロが2,000万画素。レンズ焦点距離は両者30mmで同じ。大体同じスペックになるようにした。

上記比較画像は↓この写真の赤四角部分を切り出したものである。両者撮影時期は違うが同じ位置から同じ範囲を写した。

ブログ内の縮小画像ではなくリンク先の元画像を見てほしい。見比べてみるとキレが全然違うことに気付くと思う。NEX-7は細かい部分がぼやけているのに対し、DP2クアトロは輪郭がはっきり描写できている。NEX-7のピントがずれているわけではないし、カメラの性能が低いわけでもない。これはセンサー構造に由来する差だ。

普通のイメージセンサー(ベイヤー)

以前説明した通り、普通のイメージセンサーは入ってくる光をカラーフィルターで三色に分解してからフォトダイオード(光を電気に変える半導体)に導く。カラーフィルターは水平方向に展開されているので1ドットの色を表現するために隣り合った複数のRGB画素の情報を必要とする。

それに対してフォビオンは光の性質(長波長が短波長より物質深部まで届く)を利用して、垂直方向に色を分解している。フォトダイオードを3層に重ねて、1層目では青の光を電気に変え、2層目で緑の光を、最後まで残った赤い光を3層目で電気に変える。

フォビオンセンサーの模式図

1ドットの色を再現するのに、水平方向に並んだRGB画素情報を使うより垂直に重ねられたRGB情報を使った方が、より精細な写真になるというのは何となくイメージできると思う。この違いが先ほどの比較画像の画質差に繋がっている。

こんなに有利なら世のカメラ全部フォビオン形式になるべきではないかと思うかもしれないが、今ここに描いたのは模式図にすぎず現実はもっと複雑だ。実際のセンサーには電気信号を送るための部品や配線のためのスペースが必要で、これに場所を食われると十分な受光面積を確保できなくなり高感度化や多画素化が難しくなる。フォビオンはこの辺りの取り回しで普通のセンサーに遅れを取ってしまい弱点を克服しきれなかった。

それでも多くのユーザーの支持があったならば、この垂直分離方式のセンサー開発競争が進み、普及する道もあったかもしれない。

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/1250

ピクセル等倍鑑賞用に上の写真の中央部を切り出した

思うに結局のところ、撮った写真を意味もなくピクセル等倍まで拡大して「キレが全然違う!」などと狂喜するユーザーは多くなかったのだ。普通のユーザーはパソコンやタブレットの画面いっぱいに写ればそれで十分で、ドットレベルのカリカリ描写など求めていない。かく言う私自身も「カリカリ画質の何がうれしいの?」と問われてうまく答える自信はない。

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/250

「色再現が他のカメラと違う」とフォビオンを評価する声も聞くが、私は普通のデジカメの色で困ったことがないので、そこは真剣に比較したことがない。色に関しては「フォビオンは赤が飽和しやすいな」程度の認識があるぐらいだ。デジカメで難しいとされる紫の再現ができるという話もあるが、そもそも普通のデジカメで紫が再現できずに青になってしまったという経験がないから、今のところ色再現でフォビオンが優れているという実感はない。

太陽光をガラスで分光して紫を写す(亀は飾り)

プロのようにシビアな色再現を目指すようになると、カメラによる色の違いにもっと敏感になると思うのだが、趣味で撮ってブログにアップするのがゴールだとなかなか。変な色になってしまっても「これはこれでいいな」で終わってしまう。

カメラによる色再現の違いについては興味深いテーマだと思うので、いずれ色々な撮影比較をやってみたい。

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO200, 1/500

切り出し

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/125

いつぞやの猫。

上の写真の切り出し

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/160

その猫と同じ駐車場に住んでいた猫。

切り出し

切り出し画像なのに解像感が損なわれていないのがすごいところ。どこまで行っても細部がモヤモヤしないのがフォビオンの魅力だ。

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO200, 1/1250

真ん中に黒猫がいる。残念ながらオートフォーカスは彼を捕捉できなかった。

ピントは後の壁に抜けてしまった

カメラとして、画質以外の性能は高いとは言えず、オートフォーカスもあまり得意でない。

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO200, 1/800

フォビオンを語る時にボケを云々することはあまりないが、DP2は30mmF2.8レンズだから適当に撮っていても背景はそこそこボケる。そしてフォビオンのカリカリイメージに反してそのボケは自然。ボケがうるさいんじゃないかという心配はいらない。

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO200, 1/500

切り出し

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/500

切り出し

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/800

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/800

今はもうない海岸通りのCJカフェ。

赤が鮮やかすぎるような。

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F4, ISO100, 1/1250

切り出し

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/160

切り出し

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO200, 1/400

時々、感度がISO200になっている写真があるが、意図があったわけではなく単なる設定ミス。

SIGMA dp2 Quattro, 30mm, F2.8, ISO100, 1/160

↑この写真は色被りしてしまっているのだが、全体的な雰囲気は壊れていないから、さっき書いたように「これはこれでいいや」で済ませてしまう。そうすると色の再現性についての見識が深まらない。もう少し気にするようにしたいと思う。

発表当時この独特のグリップ形状が物議を醸したのを覚えている。持ちづらい、カバンに収納しづらい、と批判されていた。私はNEX-5みたいなデザインが好きだったから見た瞬間「お、かっこいいな」と思ってグリップのことはあまり気にしていなかったのだが、言われてみれば確かに機能性を犠牲にしてオシャレ路線に走ったようにも見えて、職人気質のファンが多そうなフォビオンユーザーとの相性は悪かったように思う。出したのがハッセルだったら「またか」みたいな感じでスルーされたことだろう。

1世代前のDP2 Merrillとの比較

DP2メリルも持ち出して撮影してきたので近いうちにその写真もアップする予定。

↓こちらは7年前に書いたDP0クアトロの記事。