fortia’s カメラレビュー

カメラと猫と骨董品

12年前のデジカメG1Xは今でも使えるか?

2012年3月発売のキヤノンのコンパクトデジタルカメラPowerShot G1X。

15-60mm(換算28-112mm)のズームレンズ搭載

センサー面積がフォーサーズ以上ということで私の中では高評価のデジカメ。

ひと昔前の製品だが、今でも使える性能を持っているだろうか。

1ヶ月ほど持ち歩いてみたので、その感想を書き記したい。

G1X  ISO100, 1/800秒, F5.0, 33mm

画質はまったく問題ない。画素数は1,400万画素と今の基準からすると少なめだが、それで困る場面はないと思う。

私のようにブログにアップするぐらいしか写真の使い道がない人なら500万画素、いや200万画素でも十分だ。

G1X  ISO100, 1/15秒, F5.6, 50mm

猫だって撮れる。

中央部切り出し

↑ピントが合えばこんなにキレの良い画質。

G1X  ISO100, 1/10秒, F5.6, 50mm

ただ、オートフォーカスがちょっとあれでピントが結構抜ける。

G1X  ISO100, 1/800秒, F5.6, 52mm

春だなあ、とモクレンの蕾をズームしたが……

G1X  ISO100, 1/640秒, F5.8, 60mm

何度AFを繰り返しても手前の蕾にピントが合ってくれない。

マニュアルフォーカスに切り替えれば合わせられないこともないのだが、できればAFで合わせてほしい。

G1X  ISO100, 1/320秒, F6.3, 15mm

画質は良い。

G1X  ISO100, 1/20秒, F6.3, 26mm

G1X  ISO100, 1/320秒, F5.6, 28mm

あちらこちらに春を感じる。

G1X  ISO100, 1/160秒, F5.8, 60mm

センサー面積が大きいからボケも得やすい。構図を意識しなくても自然にボケてくれる。

ドロドロに溶ける必要はないのだが、やはりある程度ボケてくれると助かる。全域にピントが合ってしまうカメラは難しい。

G1X  ISO800, 1/40秒, F2.8, 15mm

高感度撮影もいける。

G1X  ISO1600, 1/13秒, F5.6, 40mm

ISO1600でもノイズは気にならないし色も失われない。

切り出し

今でも実用十分な性能を持っているデジカメである。

ボディもしっかりしていて昔の金属カメラのような重厚感がある。

バリアングルモニタはしゃがみ込んでの猫撮影に良い。

バリアングルモニタ

オートフォーカス性能だけが時代を感じるところで、ここが気にならなければ大変良いカメラと言える。

CCD不良のオールドデジカメ

20年前のデジカメ

2004年1月に発売されたカシオのコンパクトデジカメQV-R51イメージセンサーは普通のコンデジより少し大きめの1/1.8型で500万画素。

ガワは金属製でしっかりした作りになっており安いカメラではなかったと思われる。

いつも通り百円ジャンクで入手。

新品のような状態

シールが貼られたままのきれいな個体で期待は高まっていた。高まっていたが。

画像が乱れている

なんかおかしい。

撮影した写真をPCに取り込んでみると、

ジャンクQV-R51で撮影した写真

何を撮ってもピンク嵐になってしまう。

これはきっとあれだ。

ソニー製CCD不具合問題とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

結構大きな話題になったのでご存じの方も多いと思う。ソニーイメージセンサーの製造工程を変えて、不良リスクの高い製品をたくさん作ってしまったという問題。ソニー製CCDは様々なメーカーのカメラに使われていたので影響は広範に及んだ。

QV-R51ににソニー製CCDが使われていたという情報は見つけられなかったが、発売時期が同じで同スペックのセンサーを搭載したペンタックスのoptio555がリコールされているから、

ペンタックス、「Optio 555」など6機種でCCD不具合

多分これもそうだろうなと。

とりあえず分解してみる。

分解しようと底を見たらネジが2本なくなっていた。前所有者が修理を試みたのだろうか。

分解は特に難しくない。

液晶部分を外すとイメージセンサーにアクセスできる。KX866という型番のセンサーなのかと思って検索してみたが情報は見つからなかった。

取り外せた。これを顕微鏡で観察する。

以前、同様にコンデジセンサーを観察した時SONYの文字と型番があったから今回も探してみたが、

顕微鏡対物レンズで撮影したQV-R51のセンサー

このセンサーでは見つからなかった。

『日経ものづくり2005年12月号』にソニー製CCD不良問題について詳しく書かれているのだが、それによると不良の原因は、接着剤由来のガスの発生により電極が酸化、剥離し、CCDチップとリードフレームを繋ぐワイヤーが外れてしまうことだそうだ。

ボンディングワイヤ

ワイヤーの存在は確認できたが不良があるのかどうかはよく分からない。上の金色のパッドが腐食しているようにも見えるが、日経の記事によれば影響を受けるのはチップ側のアルミ電極だそうだから不具合が見えるとしたら写真真ん中のラインと思われる。上から見るだけでは分からない浮きがあるのかもしれない。

より詳細に観察するにはチップを封入している表面のガラスを外す必要があり、これを取り外そうと苦闘していたら、

破損センサー

壊してしまった。

もうカメラに戻せなくなってしまったが、傷つけてしまったことで得られた知見もある。

イメージセンサーの階層構造を見ることができた。

グレーの層の下に緑の層がある

この削られたグレーの層がオンチップマイクロレンズとカラーフィルターではないだろうか。

https://semi-journal.jp/wp-content/uploads/2022/02/image-sensor-structure-1.png

図はSemi journalより引用

マイクロレンズの役割については下記TOPPANサイトを参考に。

イメージセンサー向けカラーフィルタ・マイクロレンズ/オンチップカラーフィルタ | TOPPAN株式会社エレクトロニクス

 

CCD不良の原因を見てみたいと思って分解したから、そこに到達できなかったのは残念だが代わりに興味深いものを見られて良かった。

 

Takumar 1:4/300を分解清掃

ASAHI PENTAX ESIIに付けたTakumar 300mmF4 後期型

少し前の記事で、街で構えたら危険なレンズとして紹介したタクマー300mm望遠レンズ。

長さ25cm質量1.5kgの大砲。いつも通りジャンクとして入手した品だ。

↓こちらのブログによるとこのレンズには3群3枚の前期型と4群4枚の後期型があり、後期型は更に分類できるとのこと。

タクマー300mmF4 後期型 5タイプあった: つんつんブログ

私のレンズは絞りがF32まであるタイプの後期型だ。

ジャンク品なので当たり前のようにカビが生えている。

これは後玉だが、ここ以外にも問題がある。

前から覗くと、虫の死骸と思われる物体とそこから生えたカビが見える。

絞りの後側、前から3群目のレンズ上にある。

とりあえずこのカビだらけの状態でデジカメに装着して撮影してみる。

α1 + Takumar300mmF4  ISO100, F4, 1/400

割と普通に写った。

中央部分切り出し

大気の揺らぎがあってテストにはやや不適な天候だった。

α1 + Takumar300mmF4  ISO100, F4, 1/160

数枚撮影した結果、コントラスト低めのオールドレンズらしい写りと感じた。

清掃により低コントラストは改善するだろうか。分解してみる。

↑ねじるだけでレンズ部(上)とヘリコイド部(下)に分離できた。

これで後玉が取り出せる。盛大にあったカビは簡単に清掃できた。

残念ながら虫の死骸には到達できなかった。

あれこれ眺めて構造を推測するに、レンズ部は絞り羽根の前後で前群後群に分離できると思うのだがゴム輪やゴム手袋を使ってひねってみてもダメだった。

回転方向も両方試したが。

一番ひどい後玉のカビはなくなったから、まあいいやと諦めた。

清掃後のレンズで撮影した結果は以下。

α1 + Takumar300mmF4  ISO100, F4, 1/160

変わらない……

α1 + Takumar300mmF4  ISO100, F4, 1/800

中央部切り出し

よく写ってはいるのだが、コントラスト不足な印象は変わらない。

α1 + Takumar300mmF4  ISO100, F4, 1/50

中央部切り出し

モヤっとした写りになっているのが分かるだろうか。なお、猫の眼差しが不審者に向けられるようなそれになっているのは、巨大なレンズを向けられ警戒感が高まっているためと思われる。

α1 + Takumar300mmF4  ISO400, F4, 1/30

このクラスの望遠レンズは被写界深度が非常に浅く、ピントを遠方に置いても背景がよくボケてくれる。ピントを遠めに置いても背景がボケるというのは写真表現においてとても重要な要素だと思う。

α1 + Takumar300mmF4  ISO2500, F4, 1/30

中央部切り出し

現代レンズのようなシャキッとした写りにはならないが、変な癖もなく、時代を考えると優れたレンズだと思う。

α1 + Takumar300mmF4  ISO800, F4, 1/160

猫には逃げられた。

鉄道合図灯を改造して部屋の照明にする

昔、駅で使われていたという電灯。

形や質感が気に入って数年前にヤフオクで購入した。3個1,000円くらいだったと思う。

堺東駅で使われていたようだ。

電池で豆電球を点ける構造になっているが、私は部屋で使う照明として利用したかった。

中身を取り出せばLED電球を入れるぐらいのスペースは確保できるんじゃないかと思った。

穴を少し拡げてやればE17サイズのゴムソケットが入りそうだった。

プラスチックを削って入れた。

なかなか良い収まり具合。

LED電球を入れる。

底部に元々あった穴を通して配線する。

あとは点けるだけ。

思っていた以上に強い光を放ってくれた。照明として十分に使える。

ただ、インテリアとして期待していたインパクトがちょっと足りないというか、部屋の雰囲気に微妙にマッチしない感じで、ポテンシャルを引き出しきれなかったかなと。3つとも改造する気だったが考え中。

雲ひとつない青空

PowerShot G1X   ISO100, 15.1mm(広角端), F8.0, 1/250

今日は富士山がきれいだな、と思ってカメラを構えたら空に雲がひとつもないことに気づいた。あとで写真を見たら下の方にちょろちょろあった。

撮影していて、先月より青空の色が明るくなってきていると感じた。気温は下がる一方だが、空の色には冬の終わりが見え始めた。

PowerShot G1X   ISO100, 60.4mm(望遠端), F5.8, 1/500

上の写真の中央部分を切り出した(ピクセル等倍)

Canon PowerShot G1 X

撮影に使用したのは十数年前のキヤノンのコンパクトデジカメ、G1X。フォーサーズより少しだけ面積の大きいイメージセンサーを積んでいる。それでいて1,400万画素だから画質には余裕があり、ピクセル等倍鑑賞にも耐える。この面積のセンサーだからボケ量も期待できるし、大きなカメラを持ち歩きたくない時、その代わりになるかなと思って最近持ち出している。

関係者な猫

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO100, F1.4, 1/500

関係者以外立ち入り禁止の柵の中に、

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO100, F1.4, 1/200

猫がいた。まあ看板の絵を見る限り猫は禁止されていないからね。

うーん、一昔前のレンズだからかパープルフリンジがすごい。

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO100, F4, 1/60

↑よく見ると左にもう一匹いる。

見事な保護色

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO100, F2.0, 1/250

黒猫は向こうが気になる。

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO100, F2.0, 1/160

関係者区域から出てきた。

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO200, F2.2, 1/30

遠くを見つめている。

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO100, F1.4, 1/320

歩き出した。

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO400, F2.0, 1/400

なぜか振り返る。

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO400, F2.0, 1/400

視線の先に人影が。

α1 + MC11 + SIGMA85mmF1.4旧型  ISO320, F2.0, 1/400

遊んでくれる工事現場の人が来たのだった。

遠くにいたのに気付くものなんだな。

長いレンズは望遠?

dp0クアトロというデジカメがある。

シグマが2015年に発売したデジカメ

見ての通りレンズが長いが、望遠カメラではない。

むしろその逆で、ものすごく広い範囲が写る広角カメラだ。

dp0 quattro   ISO100, 14mm, F5.0, 1/1000

こういう超広角レンズは四隅が歪んで写るものもあるが、このカメラは歪みを極限まで減らし、直線が直線のまま写るように作られている。

dp0 quattro   ISO100, 14mm, F5.0, 1/250

だからこのカメラを持ち出すと、つい、直線で構成された被写体を探してしまう。

dp0 quattro   ISO100, 14mm, F4.0, 1/1000

一眼レフやデジカメ用の高性能広角レンズが長くなりがちなのは、カメラをやる人の間ではよく知られた話である。このカメラを作ったシグマの開発秘話にもその記述がある。

美しい画像を得るためには、レンズを通過してきた光に角度をつけず、できる限りまっすぐにセンサーへ当てるのが理想だ。(中略)原理としては物理的な全長を稼ぐことで、レンズの前面から入った光を何枚ものレンズを通過させながらゆっくりと曲げていき、光がレンズの反対側から出る時点で無理なくまっすぐにする仕組みだ。

SIGMA dp0 Quattro - 開発インサイドストーリー 2 | 株式会社シグマ

そんなわけで、カメラマニアはレンズの長さと画角にそれほど強い相関を見出してはいない、と思う。

しかし、一般的にはやはり「長いレンズは望遠」の図式が固いようである。

dp0 quattro   ISO100, 14mm, F4.0, 1/160

8年前、横浜みなとみらいにある↑この直線が美しい荘厳なビルを撮影していた時のことである。

こういう被写体に正対して平面的に撮ろうとすると、わずかな傾きが気になるものである。この写真でも真ん中より上はまあオーケーだが、下の方、ビル接地面の水平がちょっと怪しい気がして撮り直したくなった。フィルムカメラならその場で撮った絵の確認はできないし、フィルム代もばかにならないから撮り直しなんてやらない。でもこれはデジカメだからその場で傾きが確認できるし何度でも撮り直せる。

だから私は何度も撮り直した。

平面構成の写真をよく撮る人は分かると思うが、傾きゼロの写真は難しい。上部の直線の傾きを解消すると下部の直線が傾き、それを直そうカメラを動かすと今度は上部の線が最初より傾いた状態に……といった負の連鎖に陥る。水平ズレとパースを同時に解消しなくてはならないから想像以上に難易度が高いのだ。あとで画像処理ソフトで補正すればいいのだが、それは何か負けた気がするし。

で、撮り直していた。

多分5分くらいだったと思う。悪戦苦闘を続けていると、ビルの管理者なのか作業着に身を包んだ人が来て、険しい表情で言った。

「ちょっとあなた、さっきから何撮ってるんですか。そんな望遠レンズで」

私は衝撃を受けた。

世間に迷惑を掛けぬよう、それなりに気を遣ってこの趣味をやっていたつもりだったのに、こうもあっさり不審者に見られたという衝撃と、この程度の長さのレンズでも望遠に見えるのかという衝撃。色々なカメラを使った身からするとdp0なんてかなりコンパクトなカメラだから、これが怪しい望遠レンズに見られるとは想像もしていなかった。

私の認識では怪しい望遠レンズというのはこういうやつだ↓

Takumar 300mmF4

さすがに、これを街中で構えていたら問答無用の不審者扱いも致し方ない。

しかしこのサイズのカメラで……

シグマが気合い入れてデザインしたこのスタイリッシュなカメラで……

ちょっと時間かけてビルを撮っていただけなのに……

私はひどく打ちのめされ、もうこの趣味はやめよう、と思うほどだった。

 

ただ撮影記録を辿ると、この出来事の5日後には再びdp0を持ち出して街の撮影をしているから、立ち直りは早かったようだ。当時はすでにカメラ趣味が世間でどう思われるのか肌感覚で理解していたから、心の準備ができていたというのもあるだろう。

他人に迷惑を掛けない、を徹底するなら街中でカメラを出すのをやめるほかないが、どこか折り合える場所を探せれば、と思い今日も撮影を続けている。