いつ手に入れたのかも分からないキヤノンのFDマウントレンズ。機材整理中に出てきた。おそらく以前買ったジャンクの詰め合わせに入っていたものだろう。ズームリングを回すとグォォと部品が擦れる音がする。
レンズ内はカビだらけ。
曇りが広範囲に及んでいるのが残念。
スマホLEDで照らせばこんな状態でも、普通にみる分にはそこそこの透明度が保たれている。
経験上、これくらいなら良好な画像が得られる可能性が高い。
マウントアダプターを二つ経由して(canonFD→LeicaM、LeicaM→sonyE)α7RIIで撮影。
まずはいつもの景色から。
近年まれにみる強烈な周辺減光。
解像力は問題ない。
周辺は甘くなるが、がんばってる方だと思う。
減光はF8くらいまで絞ると気にならなくなる。
周辺の解像力も向上する。
強烈な減光があるからおもしろい写真が撮れるんじゃないかと期待して外に持ち出した。
コントラストが弱いので柔らかく懐かしい雰囲気の写真になる。
ハイライトにフレアが発生するのも懐かしい雰囲気になる要因の一つ。
逆光には弱い。
レンズが曇っているし仕方ない。
その曇りのせいもあると思うが、とにかく柔らかい描写になる。効果の弱いソフトフォーカスレンズのよう。
そして極端な周辺減光があるから露出オーバー気味に撮影しても隅に空の青さが残り、全体的な彩度が保たれた独特なハイキー写真ができあがる。
広角端開放では周辺の解像がいい塩梅に甘くなり優しい雰囲気を作り出す。
周辺部はくっきり解像しないものの物の輪郭はきちんと残るから、ぱっと見では写真全体で均整が取れているように見える。しかし実際には微妙にピントが来ていないのでどこかぼんやりした、記憶の中の風景みたいな印象の写真になる。それがとても良い。
広角端35mmでの歪曲収差は樽型でかなり大きいが、簡単なゆがみ補正で気にならないレベルまで持っていける。
35mmで顕著な歪曲も、ズームすると消える。
まあ歪曲があるレンズはあるレンズでそれなりの写し方をすればいいだろう。見る人の視線がそこに向かわないような構図もあるわけだから。
このレンズには35mm域でのマクロ機構が用意されている。
矢印のスイッチを押し上げるとズームリングを35mmよりもM側に回せるようになる。そして↓このように焦点距離35mmでのマクロ撮影が可能になる。最短撮影距離30cm。
そこまで寄れるようになるわけでもないが。しっかり写っている。
以下その他の作例。
1973年の発売時10万円だったらしい。
何も解説されていないレンズも多いこのキヤノンのサイトで当レンズに関しては色々書かれている上に作例まで載っている。キヤノン的にも自信を持って世に送り出したレンズなのだろう。
下記サイトにはレンズの生い立ちについての記述がある。なかなか興味深い。
次はカビと曇りを清掃して試写してみたいと思うが、清掃したら柔らかい雰囲気の写真が撮れなくなってしまうかもしれないと思うと悩む。